山田真子さんの工房にて

本日は石川県山中温泉にて制作されている、木地師であり漆作家の山田真子さんの工房へお邪魔した時のお話です。山中漆器として古くから漆器制作が盛んなこの地で生まれ育った真子さんにとって、木や漆に携わるという事は、ごく自然なことだったのかもしれません。

工房の壁面には作品が整然と並べられていました。古材の形状を生かした作品や、乾燥時の自然の収縮と狂いをそのまま生かした作品もあり目を楽しませてくれます。山田真子さんの作品には伝統工芸の枠から解き放たれた軽やかさと優しさを感じます。


美しい木肌の残る拭き漆のボウル。
丸みのある器を両手で包み込むように持つとほんのり温かい。

木地師として、ろくろを挽くことから漆塗りの工程を経てこのような装飾を施すところまでを全て一人で行っているそうです。きっと気が遠くなる程の工程と時間をかけてこの美しい姿に辿り着いているはずです。作品に込められた想いもじんわり伝わってくるようです。


木取りされた木材。真子さんはトチの材を好んで使用するそうです。
形づくられるのを静かに待っているかのよう。


作業台に設置された真子さん愛用のろくろ。自作の鉋(カンナ)を使い分けて挽いていきます。


ろくろ挽き→乾燥を繰り返して徐々に器の形になってゆきます。

オリジナリティー溢れる小さな作品も魅力的。全てろくろを挽いて形づくられたものを工夫して加工しているそうです。有機的なフォルムと繊細な装飾が美しい。


渋い色合いと味わい深い素材感の茶筒。一分のゆがみもなくぴたりと納まっています。

「木地師は道具を自分で作るものなんですよ。」と教えてくれた真子さん。厳しかったであろう修業時代を少しも感じさせない、とても穏やかで素敵な方です。


自作の鉋たち。この道具自体が作品のように美しいですね。

伝統工芸を受け継ぐ職人として、そして軽やかに今を駆け抜ける作家として活躍する山田真子さんが、これからどんなものを作り上げて行くのかを楽しみにしたいと思います。


2010 年 6 月 16 日 | 作家探訪の旅 | ツイートする