カテゴリー: 作家探訪の旅

小原聖子さんのアトリエにて

本日は、次回の展示の主人公である 小原聖子さんのアトリエにお邪魔したときの様子をお伝えします。聖子さんが作る、小さくて様々な形をしている金属のかたまりに魅せられて、胸ときめかせながら茅ヶ崎市香川のご自宅兼アトリエに伺いました。

葉山から海沿いの国道134号線を走って一時間足らずで聖子さん宅に到着。
昭和40年代に建てられた趣きある木造の一軒家。昭和住宅ファンとしての期待が高まります。

こちら、聖子さんお手製の表札。同じく美術のお仕事をされているパートナーの岡田健太郎さんと一緒に住まわれています。「オカダオバラ」カナとカナが手を繋いでいるみたいですね。さり気なくて粋な表札。

年期の入った木製の玄関ドアを開いて「こんにちは!」

飾り棚には、お二人の作品が仲良く並んでいました。
きっとお互いの存在が良い刺激になっているのでしょうね。素敵なカップルです。

天井の勾配に沿って二階へと続く階段と美しい障子窓。この住宅は、大家さんの息子さんがお母さんの為に設計されたそうで、おそらくは 吉村順三氏の住宅作法の流れを汲む設計士さんではないかと察します。何十年もの時を経て愛され続ける昭和の住宅に、今は聖子さんカップルが上手に手を入れて暮らしています。

階段下を利用した本棚の一部分。おっと、我ら金継ぎ部顧問、堀道広先生の「青春うるはし!うるし部」ではないか!あらはばきの金継ぎ部にも参加してくれたことがある聖子さん。嬉しいな♫

一見すると何に使うのか良くわからない道具も置いてありました。きっと色んなものにアンテナを張っていて、作品づくりに反映しているのでしょう。

何故か身長計。
お二人とも充分に大人だけど、育っているのだろうか?興味深い。

初めてお邪魔したのに、とても落ち着くリビング。
ラジオからは日本語の曲が流れていました。
ここのところamラジオの番組を好んで聴いているそうです。ルンルン♫

リビングで見せていただいた新作の白いピンバッチ。

これまでは真鍮の素材そのままの作品しか発表されていなかったので、初めて拝見したこの白には衝撃を受けました!白を表現するにあたって白漆や様々な塗料を使って実験して、一番しっくりとくる方法が見つかったのだそうです。初日のワークショップでは、参加される皆さんでこのピンバッチづくりに挑戦します。

ピンバッチの裏面。
つまみを外して、洋服やカバンなどにプスッと刺して簡単に取り付けることができます。

定番の小さな形も白くお化粧しています。ところどころ真鍮が見えるのがポイント。

ラワンが美しく張られた天井を眺めながら いよいよ二階のアトリエへ。


作業別に分けられた様々な道具とともに、大きなハンギングオブジェが迎えてくれました。いつも背筋が伸びていて姿勢の良い聖子さん。キリリとした後ろ姿。

使い込んだ作業台と椅子。むき出しの蛍光灯も格好良い。

作業台の上は小さな形だらけだぁ!
作業を進めて行く中で浮かんだアイデアを形に落とし込んだり削ったり。
ここは聖子さんの頭の中であります。

研磨する道具。どこを切りとっても絵になる。

整然と並べられた道具やパーツが、しかるべき場所に納まっています。
お仕事用なのか?なにかあった時のために用意されているのか?白いヘルメットが眩しい。

聖子さんの作品は、鋳造(ちゅうぞう)という型をとって形を作る方法がメインなのですが、このように刻印を刻んで形や模様を作る方法も魅力的です。金属で金属に刻みを入れる音は耳の奥の骨に響くようで初めての体感でした。

色んな刻印で模様を付けながら独特の立体感を出しています。

繋ぎ合わせるとこんなものが出来上がりました。
素敵だなぁ。「どこに飾ろうかな?」なんてドキドキときめいてしまいます。

一つ一つのパーツにもかなり味があるのですが、それを「手元に置きたい」と思える作品に仕上げるセンスがとても高いのです。それは生まれもっての感性の高さでしょうが、ネックレスの紐に対するこだわりや、パーツ同士を繋ぎ合わせる部分の丁寧な仕事からも、ひしひしと伝わるものがあります。

最後は、きらきら輝く聖子さんの作業机の上からさようなら!
この机の上で新しい作品が、きっと今もどんどん制作されていますよ。

それでは。いよいよ来週末、7月16日(土)から始まる、小原聖子さんの個展 『 Circle of Life 』でお会いしましょう!初日は聖子さんが在廊していますよ。皆さまのご来店を心よりお待ちしております。


西山芳浩さんの工房へ

本日は、金沢在住のガラス作家 西山芳浩さんの工房へお邪魔したときのお話です。西山さんとも嬉しいご縁があり「はなとオブジェ」に参加いただくことになりました。写真はゆったりとした時間が流れるアトリエでの風景。自然光の中で眩く佇む作品の美しさに、時を忘れて見入ってしまいます。

西山さんは、現在二つの工房で制作されているそうですが、この日は金沢市牧山ガラス工房でお仕事の日でした。金沢の街から適度に離れており、周囲には自然が溢れ、風通し良く明るい空気が流れている場所です。この気持ちいい雰囲気は何だろう?と思っていたら、元は小学校だったとのこと。ほんとだ。入口の向こうには小振りなグラウンドがありました。

トーテムポール型の学校表札。一人一人自分の顔を彫ったんだろうな。小さな学校だったんだね。

小学校と言えば二宮金次郎さんですよね。ちゃんといらっしゃいました。

建物の中は小学校の校舎を活かしたアトリエ棟と、立派な設備が備えられた工房棟があります。
電気炉や徐冷炉など設備について丁寧に説明してくれた西山さん。
研磨専用の別室も窓越しに拝見させていただきました。
天井が高く、明るくて開放的な工房が、西山さんはとても気に入っているそうです。

工房オリエンテーリングの最後に「面白い所を見せてあげますよ」と西山さんに案内されたのは、
体育館でした!
天井が木梁なんですよ。この床がワックスでピカピカな感じ。懐かしいですね。
立派な工房とレトロな施設の共存です。

さて、楽しい工房見学を終えて西山さんのアトリエに入りましたよ。

柔らかくて優しい語り調の西山さんとは同じ四国出身(西山さんは愛媛のお生まれ)としても打ち解けてお話できました。夫と一緒に車を走らせお伺いしたのが、3月の末。あの震災と収束の糸口すら見つからない原発への不安がピークだった頃でしたが、気持ち良い空気と西山さんのお人柄、そして作品と触れ合う中で、緊張していた心が「すぅ〜」と癒されていくのを体で感じました。

八角形のビン。ゆらゆらとした肌合い。
西山さんが一つ一つ息を吹き込むそれぞれに表情があります。

モール小鉢。
光を受けてきらめきます。

一目惚れしたグラス。
このグラスの為に制作した鉄型を見せていただき感動!
旋盤を使って鉄板をカットし、自ら溶接して仕上げたのだそう。
どことなく、しのぎの間隔が不均一なのも、狙って出来るものではないようです。

西山さんの制作工程は、このような道具を作ったり、実際にガラスを吹いてサンプルを制作する中で
徐々に理想の形へ近づけて行くそうです。
頭で考えるより手を動かしてみる。西山さんのもの作りへ込める情熱を垣間見た瞬間でした。

ガラスの角ビン。いろいろ。
西山さんから作り出されるガラスには物語を感じます。

横に並べてみましたよ。みんな違ってみんないいのです。

ご自身の感覚を大切に、心からガラス制作を楽しむ姿が印象的だった西山芳浩さん。

「はなとオブジェ」では、ご紹介したビンを中心に新作の花入れ、
そして定番の器も届けてくださる予定です。
どうぞご期待ください!


成瀬彩さんの工房へ

本日は4月末より始まる展示「はなとオブジェ」にも参加頂いている、成瀬彩さんの工房兼お住まいにお邪魔した時のお話です。
最近まであらはばきより車で30分程のご近所さんでしたが、テント内での作品作り(!)が難しく、下町風情が残る東京の大森にお引っ越しされました。周りには町工場が点在し、懐かしいバッティングセンターに銭湯、往来するおじいちゃんや小学生。時間があれば撮影散歩をしたかったですが、さっそく成瀬さんの工房へ。


到着して笑顔で迎えてくれた、成瀬さん。雰囲気も自然体で素敵な方。
今回は会えなく残念でしたが、同じく木工をしていた旦那さんも、とても笑顔が素敵。
やっぱり夫婦は年を重ねると似てくるのかなあ。
ちょっと作業風景を撮らせてもらいました。かわって、凛々しい横顔。


愛猫ジョゼさんも登場。
カツオブシの違いが判る、5才、男盛り。
成瀬家では3匹居候中のようです。


絵になる作業台。和三盆の木型のような壁掛けを作成中。
小振りながらも、使い勝手のよい広さで、作業が捗りそうな工房。材や道具がいっぱい。


何故か?逆さにつった小さなロッキングチェア。とても丁寧な造り。


ふとん叩きもありました。なるほど〜このように作っていたのですね。
お客さんの意見も取り入れ、何回も改良を重ねているそうです。

いちごとお茶をごちそうになりながら、成瀬さんの作品について、あれこれお話。
現在、食に関する作品と、オブジェと花器を制作中とのこと。
ちらりと見せてもらった木鉢、素敵でした。うつわ、今後の展開を期待していますね。
4月末に届く成瀬さんの「はなとオブジェ」をちょこっとご紹介。


まずは、小振りなブローチ。
定番品よりも小さく、サイズ的に使いやすそう。ぜひ胸元に。
躍動感のある走るウサギ、意外に珍しいかも。
赤茶色の作品は、漆にマコモ(ハナガツミ)を練り込んだものを塗っているそうです。


つぎは、手のひらサイズの小さな花入れ。
サイズといい、質感としのぎのラインといい、種っぽいというか、多肉植物っぽい。
植物に草花を入れるようで、おもしろくなりそう。


制作過程はこんな感じ。


最後に、今回の企画展のテーマに、ピッタリな作品。
中性的で、なんともユーモラスな体型の人物。小ビンを抱えています。
一輪挿しにしたり。小ビンを外して草花を集めて差したり。いろいろ楽しめそう。
私たちが「成瀬さんの作品がいいなあ!」と思ったのは、人形のオブジェからでした。
なので、個人的に欲しいと感じる、思い通りな出来映えでとても嬉しい。


制作前のスケッチも良い感じ。


この小顔と佇まい、いいでしょ。成瀬さんにしか作れません。
単身飛騨へ向かい修行する以前。美大に進むべきか迷っていた時の感覚の名残りでしょうか。
いえいえ。作品に手でふれて、形とのみ跡を指でなぞってみると、
優しさときりりと澄んだ造形感覚が垣間みられ、テクニックではない、もって生まれたものだと感じます。
ぜひぜひ展示中は、見るだけではなく手に取り、成瀬さんの人柄と所懐を作品から感じとってみてください。

最後に。展示期間中は、成瀬彩さんの定番商品も常設スペースにてご紹介しています。
箸、箸置き、小箱、布団たたきなど。あわせてお楽しみに。


大西美代子( MIYOKO ONISHI )さんの「はなとオブジェ」

4月29日(金・祝)より始まる企画展「はなとオブジェ」に向けて、参加作家の紹介をしてまいります。本日は陶作家 大西美代子(MIYOKO ONISHI)さんの作品をご覧いただきます。写真は3月の始めに、鎌倉のご自宅兼アトリエへお伺いした際に撮影したものです。柔らかな春の日差しが溢れるリビングに並べられた、小さな花入れや器たち。なんとも心和む光景です。

愛知県豊田市で生まれ育った大西さんは、小さい頃からご両親に連れられて地元の焼き物市などに通ううちに、自然と器そのものに惹かれていったそうです。瀬戸の窯業高等技術専門校で技術を習得された後、結婚を機にイギリスへ。制作の拠点をロンドンとして4年間活動。現在2才の娘さんを出産するタイミングで日本へ戻り、鎌倉にて再び制作を開始されたばかりです。

ですが、活動の拠点は再びイギリスになりそうです。何と「はなとオブジェ」の展示が終了した後に、ご主人のお仕事の都合で再び渡英されることになったのです。大西美代子さんの、これからの日本での活動を楽しみにしていただけに、とても淋しい想いはありますが、再びイギリスへ渡った後も応援したいと思います。

それでは。大西美代子さんの作品をご覧ください。

ぷっくりと柔らかなフォルムの花入れ。表面の質感も美しいです。

糸巻きの形をした花入れ。口のザラザラした所は貝殻を使って表現されています。おもしろい。

せいたかノッポの糸巻きさんもいますよ。

たまごの殻を割ってヒナが生まれた後みたいですね。優しいかたちです。

こちらも、このように木の実や花をあしらうための器です。光沢のある肌合いもきれいですね。

地層のようにじんわりと滲む色の濃淡が美しいカップ。

カップの口の部分。意外にも口当たりがよいのだそうです。素敵です。

横一列に陳列された花入れたち。
一つ一つ表情が違うのですが、連続する繋がりを意識して見て欲しいそうです。

連続する繋がりは、ハンギングオブジェとして一つの作品にもなっています。いい音がするのですよ。

作品が到着する前に、大西さんから届いた素敵なブック。新しく作品を考えるときには、いつもこのようなブッグを作るのだそうです。展示の際には作品とともに置いておきますので見てみてくださいね。

どの作品にも表情があって、写真ではお伝えしきれません。実物は もっともっと味がありますので、ぜひぜひお手にとってご覧いただきたいです。

大西美代子さんの「はなとオブジェ」どうぞご期待ください!


山田真子さんの工房にて

本日は石川県山中温泉にて制作されている、木地師であり漆作家の山田真子さんの工房へお邪魔した時のお話です。山中漆器として古くから漆器制作が盛んなこの地で生まれ育った真子さんにとって、木や漆に携わるという事は、ごく自然なことだったのかもしれません。

工房の壁面には作品が整然と並べられていました。古材の形状を生かした作品や、乾燥時の自然の収縮と狂いをそのまま生かした作品もあり目を楽しませてくれます。山田真子さんの作品には伝統工芸の枠から解き放たれた軽やかさと優しさを感じます。


美しい木肌の残る拭き漆のボウル。
丸みのある器を両手で包み込むように持つとほんのり温かい。

木地師として、ろくろを挽くことから漆塗りの工程を経てこのような装飾を施すところまでを全て一人で行っているそうです。きっと気が遠くなる程の工程と時間をかけてこの美しい姿に辿り着いているはずです。作品に込められた想いもじんわり伝わってくるようです。


木取りされた木材。真子さんはトチの材を好んで使用するそうです。
形づくられるのを静かに待っているかのよう。


作業台に設置された真子さん愛用のろくろ。自作の鉋(カンナ)を使い分けて挽いていきます。


ろくろ挽き→乾燥を繰り返して徐々に器の形になってゆきます。

オリジナリティー溢れる小さな作品も魅力的。全てろくろを挽いて形づくられたものを工夫して加工しているそうです。有機的なフォルムと繊細な装飾が美しい。


渋い色合いと味わい深い素材感の茶筒。一分のゆがみもなくぴたりと納まっています。

「木地師は道具を自分で作るものなんですよ。」と教えてくれた真子さん。厳しかったであろう修業時代を少しも感じさせない、とても穏やかで素敵な方です。


自作の鉋たち。この道具自体が作品のように美しいですね。

伝統工芸を受け継ぐ職人として、そして軽やかに今を駆け抜ける作家として活躍する山田真子さんが、これからどんなものを作り上げて行くのかを楽しみにしたいと思います。


小沢敦志さんのアトリエにて

本日は、鉄作家「小沢敦志」さんのアトリエにお邪魔した時のお話です。立川市富士見町に石田倉庫という素敵な場所があります。ここは様々なジャンルのアーティストの活動拠点となっており、小沢さんのアトリエはこの青いドアが印象的な倉庫No.3なのです。

中に入ると、そこは正に物作りの現場と言った趣き。大きな機材や高く積み上げられた何かの材料、そして色んな道具が所狭しと詰め込まれた、”The 男らしい空間”です!

小沢さんが取り組まれている制作の一つに、スチール製の工業製品を火で赤め、ひたすら叩き続けるという、とても興味深いものがあります。こちらは自転車の車輪ですね。鉄を叩いている時は、いかに作為的にならずにモノの個性を引き出すか?ということを常に心掛けているそうです。

次は問題です。さてこの「かたまり」は何でしょう?
きっと分からないですよね。
正解は、コピー機です。
えっ!コピー機なの?

そうなんです。コピー機の薄い板状のパーツを火で赤めた後、可能な限り折り畳んでいくとこうなった。かなりいい形していると思いませんか。

小沢さんが、少し実演をしてくださることに!薄い板状のスチールを手に持ち、バーナーから吹き出る火で真っ赤になるまで熱します。

そしてすぐさまアンビルと呼ばれる金床の上でビシビシ叩きます。「鉄は熱いうちに打て」を目の前で体現していただき感激でございます。左利きの小沢さん。手の振りが早くてシャッターに収まりきらず。

こちらは愛用の金槌コレクション。鉄製の金槌ラックもいい佇まいです。

こちらはペンチを叩いた後、エイっと持ち手を曲げたもの。壁に掛けることが出来、フックとしても使う事ができます。どことなく愛嬌のある姿も魅力。


北川家へ。

昨日は、やけに暖かくて春が来たのかと勘違いしそうになりましたね。裏庭から見える梅林もうっかり六部咲きくらい一気にほころびちゃいました。

さてさて。今日は先日のmitome tuskasaさんの展示の時にお世話になった「北川ベーカリー」さんのご自宅兼工房へお邪魔してきました。素朴で素敵な看板。好きです。

東京の三鷹通りを少し入ったあたり。落ち着いた住宅街に建つ昭和な平屋の建物。お家の中の随所に懐かしい温もりを感じます。

北川ベーカリーさんには、三月の石原稔久さんの個展の時にとても素晴らしい計画があるので、ぜひご協力いただきたく。そのお話をしにやって来たのです。

カリカリ歯ごたえ良く、メープルシロップでほんのりと甘いラスク。そしていちごをごちそうになりました♡三月の美味しいこと計画中でございます。詳しく決まった頃にご報告しますね!

お家の中の一室はギャラリースペースになっており、近々パンの販売も始まるようですよ。ご近所の皆さん、羨ましいです!そして。写真の暖かそうな帽子は奥さんが編んだもの。「シャム屋」という名前で今後楽しい展開が期待されます。パンを焼いて帽子やバックを編んで。多才なご夫妻なのです。


「NEJI」村上和香奈さんのアトリエへ。

本日は年末の旅の途中に、京都の北山で手作りの腕時計と装身具を制作されている「NEJI」村上和香奈さんのアトリエショップへお邪魔したときのお話です。

京都と言うと、「上ル」や「西入ル」とか複雑な表記の細い路地をくねくねした所にあるのかな?などと勝手なイメージを抱きつつ目的地に辿り着くと、意外にも北山通りという大きな通り沿いにつつましやかに佇むお店がそうなのでした。立地についてお尋ねすると、時計本体や金具の金属加工の際に金槌などで大きな音が出るため、あえてこのような場所を選ばれたそうです。

軒先にはクレマチスと時計草のツルが生い茂り、しっくいの白い壁と木製のドアとの調和がとても素敵。ワクワク気分で扉を開きました。

「こんにちは〜」と中へ入ると、外の喧騒を忘れる程に落ち着いた空間が広がっていました。温かな照明と味わい深い調度の品々に癒されます。

通りに面した窓辺で美味しいお菓子とお茶を入れてくださいました。テーブルの上にとまっている鳥さんはお友達の郡司庸久さんのものだそう。しっくりとお店の雰囲気に溶け込んでいます。

店内の奥がアトリエスペース。こちらで通りを行き過ぎる車や人々を眺めながら、トントンカンカンと時計を作っているのですね。正しい時計屋さんの趣が感じられます。

村上和香奈さんの腕時計の中の一つ。ムーブメント以外は全て心のこもった手作りです。腕時計って身につけている人と友に時を刻んでいくもの。何年も前に時計を購入したお客様が、時計のメンテナンスの為に再びお店に来てくれることもとても嬉しいことなんです。と話してくださいました。

自分の手から離れるとおしまいではなくて、その後の長〜いお付き合いのことまで考えてもの作りをしている方を前にすると、何だか大きくて温かいものにつつまれる気持ちがしました。

このような小さな袋物も制作していらっしゃいます。古布を縫ってお手製の革ヒモをくるりと回した味わいのある形。

正直時計ってあまり好きではなかった私。秒針がカチカチ動く音に急かされているように感じて、自宅の壁掛け時計も目を凝らさないと見えないくらい極小のものだし、腕時計なんて縁遠いと思っていたけど、こうして村上さんにお会いして作品を拝見しお話を聞いているうちに時計に対する思いが変わって来たような気がします。

私もこれを機に腕時計してみようかな!村上さんの腕時計なら長いお付き合いが出来そうな予感です。
村上和香奈さん。年の瀬の慌ただしい最中に大変お世話になりました。

追伸。
二月の企画展「かたちのきおく」では、「NEJI」村上和香奈さんの手作り腕時計と古布袋を届けてくださることになりました!
古いものがほとんどの作品の中で、村上さんの腕時計は過去から現在へと時をつなげる象徴的な存在として展示いたします。どうぞお楽しみに!!


津田清和さんの工房へ。

本日はガラス作家、津田清和さんの工房兼お住まいにお邪魔した時のお話です。
昨年11月に初めて伺い、年末に家族でまた遊びに行きました。
奈良県葛城市の閑静な住宅街に、一昨年独立して工房を。
自身の作品を作りつつガラス教室もしているそうです。ご近所さんが羨ましい。通いたい〜。

もとは工場だそうで工房は広く、ご自身の作品用に作った(!)窯が何台も。
ガラス作家さんは作品ごとに道具や窯を作る方が多いとか。
しかし、広いにも関わらず整理整頓がキッチリされて、丹精に作品や切花やオブジェが飾られており、津田さんのお人柄と感覚をうかがい知ることができます。


使い込まれた手仕事の道具。見ているだけで楽しい。


アツアツの窯。実際に溶かして息子(少しびびり気味)相手に実演してくれました。


みょーんと、どこまでも伸びる伸びる。

ふと、窯の上を見ると見慣れたオブジェがぽつりと。
以前、津田さんが「工房からの風」に参加した時に、となりブースだった石原稔久さんから譲り受けたワンちゃんでした。火の番として窯の上でずっと見守っているそうです。

津田さんのつくる作品は、凛々しく美しい。そして使い心地がよい。
ガラスの厚さが極限まで薄いもの、細かく繊細な切子を施したもの、錆や緑青をイメージさせる風合いを持つもの、などなど。
日常のなかで、そっと美しく存在するもの。希有なものばかりです。

何年か前にヒナタノオトさんで津田さんの蕎麦猪口に出会い、不器用で何度か割りつつ(笑)買い足すほど作品が好きな相方(妻)の要望で伺い、とても嬉しい!ことにご縁がありARAHABAKIで作品を取り扱うことになりました。今年の前半には何種類か届くと思いますのでお楽しみに!
また、5月の「そとごはんのすすめ II」に参加くださることになり、野外でガラスものをどのように使えるか、そちらの方もとても楽しみ!
津田さん、年末のお忙しい中、本当にありがとうございました!


大江憲一さんの工房にて

本日は、陶作家、大江憲一さんの工房兼お住まいにお邪魔した時のお話です。この夏に工房を岐阜県の多治見から、瑞浪に移されたばかり。同じく陶作家の木村香菜子さんと共同で使われています。

道路脇からハイキングコースの入口のような緑のトンネルを抜けた奥、明るく視界が開ける場所に大江さんの新しい工房がありました。草丈の短い植物が茂った広〜い前庭には、羊など放牧したくなるような素晴らしいロケーション。大江さん達が越してくる前には、彫刻家のアトリエとして使用されていた平屋造りの大きな建物です。

「よくここが分かりましたね〜。」と気さくな笑顔で迎えてくださった大江さん。これから神輿でも担ぐのかな?と思わせる様なイキな出で立ちで登場。カッコいいです!

屋根から下垂したのか、地面から這い上がったのか?つる植物がワイルドに壁面緑化中でした。これまた良いねぇ。

踊れる程に広い建物の中は、居住空間を中央に工房とショールームに空間が仕切られていました。写真は男前なキッチンに立つ大江さん。「おやっ!」足元に誰かいますねぇ。


「ようこそ〜」と近づいてきてくれたのは愛猫の”ちよ”さんでした。可愛いですなぁ。

サッカー大好き大江さんの命名”カカ”くん。とってもシャイなのでした。

大江さんの工房の挿し色は青みたいですね。こちらは青いドアが印象的なリビング。部屋のテーマは「海の家」だそうです。

屋根から煙突が見えたので窯の煙突かな?と思ったら重厚感のある暖炉でした。これで長い冬も寒さ知らずですね。

広い空間を上手に分けて住まわれている大江さん。こちらは装飾の行程で使う机でしょうか。来るべく冬に備えて、工房の中はまだまだ制作途中だそうです。

再び庭へ出てみんなでボール回しをしながら、打ち合わせをしたり世間話をしたり。新鮮でした(笑)。工房内に作ろうかな?と話してくれたクライミングウォール、もし実現できたらやってみたいです!

穏やかな午後の日だまりの中の一枚。新しいこの工房から、気持ちも新たに生み出される大江憲一さんの作品をこれからも楽しみにしています。大江さん、お忙しい中、本当にありがとうございました!